[外国映画]ソウルフル・ワールド(2020)

感想

新年あけましておめでとうございます。お正月休み。いろいろテレビや映画を観まくってます。そんな中、この作品が面白いらしいということで観ることにしました。

ディズニー公式サービス「ディズニー+(プラス)」でしか配信していませんが、月額770円、しかも初月無料で、ディズニー、ピクサーのみならずMARVELやSTAR WARSも見放題ということで思い切って登録して鑑賞しました。

精神世界の難しい世界観を、愛らしいキャラクター達と見事なCG映像技術で表現しながら、「人が生きる意味」という根本的な問いに向き合えた、心が温まるとても深く面白い作品でした。

※これより先は、ネタバレを少々含むので注意してご覧ください

あらすじ

ニューヨークの学校で非常勤の音楽教師をしている中年黒人男性ジョー。ジャズピアニストとして華々しいステージに立つことを夢見るが、母親に「夢ばかり見ていないで定職につけ」と言われ続け諦めかけている。そんな中、以前の教え子から、バンドのメンバーが都合が悪くなったため今夜のジャズステージにピアノで参加して欲しいとの電話を受ける。憧れの場所、憧れのミュージシャンと同じステージに立てることに胸躍る中、ジョーは突然の事故で命を失う危機に。

ジョーから抜け出た魂(ソウル)は、「夢を目前に死にたくない」とあの世に行くことに必死に抵抗し、人が生まれる前の世界に迷い込む。そこで出会った、人に生まれることに全く興味が持てずに彷徨い続ける問題児の「22番」と共に、なんとか現実の人間世界に戻るのだが。。

果たしてジョーは夢のステージに立てるのか?22番は人生の「きらめき」を見つけることができるのか?

良かったところ

世界観、キャラクター、映像技術、ストーリー、メッセージどれをとっても素晴らしい作品でした。前回書いた「えんとつ町のプペル」も絶賛したのですが、どちらかというとプペルは「立ち上がれ、諦めるな」的な熱いメッセージでしたが、この映画は、同じ夢というキーワードはあるものの、「無理はしなくてもいいんだよ。幸せは日常にあるんだよ」と言っているような、落ち着いた気持ちにさせてくれる作品でした。いろいろな観点で感想を述べさせて頂こうと思います。

キャラクター

まず、「何か人生をもっと光り輝くものにしたい」と日常を送るジョーの姿が、まさしく僕と性別も年代も気持ち的にも重なるので、シンパシーを感じます。容姿も、ほおが膨れた細長い顔、垂れた眉、大きな瞳で、誰が見ても好感を持てるような優しい感じがあふれていて、味方してあげたい雰囲気になります。自信のない表情や姿勢、しぐさからして、一般的にも「くすぶっているおじさん」がわかりやすく、素晴らしい設定と感じました。

ジョーの母親も、スマートで、つり目っぽいメガネのショートカットの女性で、いかにも堅物の教育ママ的な感じがして、物語序盤の短い導入部分で主人公との対立構造と現状の問題点が明確に理解できて、良かったです。

そしてなんと言っても、あの世と生まれる前の世界に出てくるソウルと、管理者たち(全員ジェリー)の表現方法が驚きでした。

ソウルはみんな緑と青のグラデーションだけで立体感や柔軟性を表現しています。つまり表情と動きだけで違いや個性を出しているのですが、さすがピクサー、さすが自分の好きな作品「インサイド・ヘッド」の監督作品だけあり、とても表情豊かでオーバーアクションで愛着が湧きました。

一番驚いたのはジェリー達で、3D作品の中にありながらも、線だけで表現していて、しかも変幻自在で人のイマジネーションの凄さを感じました。精神世界の概念的なモノ。つまりは形もなく共通イメージもない部分を、形にして観客の頭に自然に刷り込ませて世界観を理解させる。。

ここがこの作品の一番感心した部分でもあります。

ストーリーとテーマ

あまり詳しく書くとネタバレになってしまいますが、世の中の一般的な物語の構造とは結構違うと思います。日常(状況説明)→事件(葛藤)→解決(日常に戻る)がよくある筋だと思いますが、この葛藤の部分のシチュエーションが数回行ったり来たりで、奇想天外な感じでした。

現実世界、生まれる前の世界、それぞれのシチュエーションで、問題と解決があり、キャラクターが少しずつ心のことを理解していく(成長していく)展開。

誰もが常識的に「夢を掴むことが人生の目的だ」「夢を諦めてそこそこの人生を送ることは、本当の幸せとは言えない」のように刷り込まれて生きている節があると思います。この作品も、観客のそう言った常識を前提にした作りをしているので、作品中で「きらめき」と表現しているワクワク、ドキドキするモノ=好きなこと、得意なことを見つけることが目的だと思うし、ジョーと22番がきらめきの実現をしたり、見つけることが最大のハッピーエンドかと思います。

でも違う形もあるんだよ。と気づかせてくれるのがこの作品でした。冒頭でも言った「人が生きる意味」という根本的な問いに、普段はあまり意識せずに、盲目的に生きている自分も向き合えたことができたし、それで人生がシビアで緊張感が高まったわけではなく、むしろ逆で、肩の力が抜けて楽になった感じがしました。

まとめ

見終わった後も、とても考えさせられる作品でした。うちには年頃の子供がいますが、親として「夢を持って」「目標を持ちなさい」と言ってしまいがちだと思います。でもそれが必ずしも正しいわけでもなく、一つ言えることは、「今を大切に、日常の中で幸せを感じながら楽しく生きよう」という事です。

なかなか人生の機微を経験した大人でないと難しいテーマかと思います。

生活の中で、生き辛さや漠然とした焦燥感を感じている全ての大人の方に見てもらいたい良質な3Dアニメーション映画です。是非ご覧ください。

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